ステップ P3-2-1
大数の法則と中心極限定理
この ページで まなぶ こと
- 大数の法則(平均は期待値に収束する)の意味と根拠がわかる
- 中心極限定理(標準化した和は標準正規分布に近づく)をつかえるようになる
独立な試行の平均のばらつきは σ²/n で縮む——だから平均は期待値に収束(大数の法則)。さらに、条件を満たす確率変数の和を標準化すると標準正規分布に近づく(中心極限定理)。√n スケールの普遍法則。
平均は、なぜ落ち着くのか
さいころをn回振った平均 X̄ を考える。期待値の線形性から E[X̄] = 3.5——中心はいつも期待値。ばらつきはどうか。独立な試行では分散もたせる(V[X + Y] = V[X] + V[Y]、独立のとき)から——
\[V[\bar{X}] = \frac{V[X]}{n}\]平均のばらつきは、回数nに反比例して縮む。チェビシェフの不等式
\[P(|\bar X-\mu|\geq\varepsilon)\leq \frac{V[X]}{n\varepsilon^2}\]を使うと、平均が期待値からε以上ずれる確率が0へ近づくとわかる。これが大数の法則だ:
この不等式の理由も短い。ずれがε以上なら (X̄−μ)² はε²以上だから、ずれの2乗の平均 V[X̄] は少なくとも「ε² × その確率」。したがって確率は V[X̄]/ε² 以下になる。
独立に同じ試行をくり返すとき、その平均は期待値に収束する。
「期待値は長期平均」(前たんげん)の約束が、不等式によって裏づけられた。保険会社やカジノが多数の取引について収支を設計できるのは、回数が増えるほど平均の偶然のぶれが小さくなるからだ。個々の会社が必ず利益を得る、という意味ではない。
例1 :コイン1万回投げの表の割合の標準偏差は √(0.25/10000) = 0.005——表の割合は 0.5 ± 0.01 にほぼ確実に収まる。10回では ±0.3 も珍しくない。nの平方根の分だけ偶然が薄まる。
中心極限定理 — 釣鐘はどこから来るか
大数の法則は「どこに集まるか」を教えた。分布の形まで教えるのが中心極限定理(CLT)だ:
有限な平均と0でない有限な分散をもつ、独立で同じ分布の確率変数の和を標準化すると、nが大きいとき正規分布に近づく。
この条件のもとでは、もとの分布がさいころでも、コインでも、ゆがんだ分布でもよい。中心を引いて標準偏差で割った和が、釣鐘型に近づく。平均や分散が存在しない分布などは、この形の定理の対象外だ。
例2 :さいころ1個の目の分布は平ら(一様)。2個の和は三角形(7が頂点——P2で数えた!)。3個、4個とたすほど滑らかな釣鐘に近づいていく。手で確かめられるCLTだ。
例3 :コインn = 100回の表の回数は、期待値 np = 50、標準偏差 √(np(1−p)) = 5 の正規分布で近似できる。平均から標準偏差1個分にあたる目安は 45回から55回付近。離散値なので、端を含める正確な確率には連続補正が必要だ。40回から60回付近は標準偏差2個分の目安になる。
例4 :世論調査が「約1000人」で行われるのは、誤差 ≒ 1/√n = 約3% がちょうど実用になる規模だから。√n の法則は、調査設計の経済学でもある。
よくあるまちがい
その1:大数の法則を「出目の帳尻合わせ」と誤読。 表が続いたあと裏が出やすくなる——ならない(独立!)。割合が落ち着くのは、過去が補正されるからではなく、未来の膨大な回数に薄められるからだ(ギャンブラーの誤謬)。
その2:nが小さいのにCLTを使う。 近似が効くのは「十分大きいn」(目安は分布の形にもよるが数十以上)。n = 5 の和に正規分布を当てるのは早すぎる。
れんしゅう
大数の法則の主張は?
V[X] = 4 のとき、n = 100 回の平均の分散 V[X̄] = ?(4/100 を小数で)
有限な平均と正の有限な分散を持つ独立同分布の確率変数について、中心極限定理の主張は?
コイン100回の表の回数の期待値は?
その標準偏差は?
コイン100回の表の回数で、平均から標準偏差1個分にあたる範囲の目安は?
「表が続いたから次は裏が出やすい」は?
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!