ステップ A10-2-1
コーシーの積分定理と積分公式
この ページで まなぶ こと
- コーシーの積分定理(正則なら閉曲線積分は0)の意味と根拠がわかる
- 1/z の一周積分 2πi と、コーシーの積分公式をつかえるようになる
正則関数の閉曲線積分は0(グリーンの定理+CR方程式)。例外の主が 1/z——原点を囲んで一周すると 2πi。積分公式 f(a) = (1/2πi)∮ f(z)/(z − a) dz——内部の値は縁の値で決まる。
正則なら、一周は0
複素関数の線積分 ∮f(z)dz を考える(道はA9の線積分と同じく媒介変数で歩く)。中心定理がこれだ:
コーシーの積分定理 :fが閉曲線Cとその内部で正則なら——
\[\oint_C f(z)\, dz = 0\]なぜか。f dz = (u + iv)(dx + i dy) を実部・虚部に分けると、2本の実の線積分になる。グリーンの定理(A9!)でそれぞれを重積分に変えると、中身に現れるのは——ちょうどCR方程式の左辺ひく右辺。正則ならぜんぶ0 ∎
A9の「保存場では一周0」と同じ構図だ:正則関数は、複素平面の保存場なのだ。
例1 :∮z² dz(どんな閉曲線でも)= 0。多項式は全平面で正則だから。
例外の主役 — 1/z
f(z) = 1/z は原点で破綻する(0でわれない——特異点)。原点を囲む単位円 z = e^(it)(0 ≦ t ≦ 2π、オイラーの公式!)で一周してみよう。dz = ie^(it)dt だから——
\[\oint \frac{dz}{z} = \int_0^{2\pi} \frac{ie^{it}}{e^{it}}\, dt = \int_0^{2\pi} i\, dt = 2\pi i\]0でない! 特異点を囲むと、定理の前提(内部で正則)が崩れて値が生き残る。しかも答えは道の形によらず(特異点を1周する限り)いつも 2πi——渦の場の一周が 2π だったこと(A9)の複素版だ。実は 1/zⁿ(n ≧ 2)の一周は0で、1/z だけが 2πi を残す。この「1/z の係数だけが生き残る」事実が、次のたんげんの留数定理の心臓になる。
コーシーの積分公式 — 内側は縁で決まる
積分定理と 1/z の計算を組み合わせると、驚くべき公式が出る。fが正則で、aがCの内部の点なら——
\[f(a) = \frac{1}{2\pi i}\oint_C \frac{f(z)}{z - a}\, dz\]内部の点での値が、縁の上の値だけから完全に復元できる。 実関数ではありえない(縁が同じでも中身は自由自在)。正則関数は、CR方程式で縦横に縛られているため、縁が決まれば中身に選択の余地がないのだ。
この公式を a で何度でも微分できるので、正則関数は自動的に無限回微分可能、さらにテイラー展開(A6)の収束まで保証される——前たんげんで予告した「楽園」の証書がこれだ。
例2 :∮ e^z/(z − 0) dz(単位円)= 2πi × e⁰ = 2πi。積分公式を逆向きに使えば、複雑な積分が「点の値の読み取り」に化ける。
よくあるまちがい
その1:どんな関数でも一周0とする。 0になるのは囲んだ内部まで正則なとき。1/z のように特異点を囲めば話は別——「囲んでいるか」が最重要チェックだ。
その2:2πi の i を落とす。 答えは 2π ではなく 2πi(虚数単位つき)。実の渦(A9)との対比で、複素では i が残ると覚えよう。
れんしゅう
∮z³ dz(閉曲線、全平面正則)= ?
∮dz/z(原点を囲む)= □πi。□は?
コーシーの積分定理の前提は?
∮e^z/z dz(単位円)= 2πi × e⁰。e⁰ = ?
積分公式が言うことは?
正則関数が無限回微分可能な根拠は?
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!