ステップ A10-3-1
ローラン展開と留数定理
この ページで まなぶ こと
- ローラン展開と留数の意味がわかり、簡単な留数を求められるようになる
- 留数定理で一周積分と実積分を計算できるようになる
特異点まわりの展開(ローラン展開)の 1/(z − a) の係数が留数 Res。一周積分はその総和の 2πi 倍:∮f dz = 2πi Σ Res。半円の道で実積分に応用でき、∫dx/(1 + x²) = π が留数ひとつで出る。
特異点のまわりでは、負のべきが現れる
正則関数はテイラー展開できた(前たんげん)。では特異点のまわりでは? 負のべきを許して展開する——ローラン展開だ。
\[f(z) = \cdots + \frac{a_{-2}}{(z - a)^2} + \frac{a_{-1}}{z - a} + a_0 + a_1(z - a) + \cdots\]前たんげんの計算を思い出そう:一周積分で 1/(z − a)² 以上も正のべきもすべて0になり、1/(z − a) の項だけが 2πi を残す。つまり一周積分は、係数 a₋₁ がすべてを握っている。この a₋₁ を留数(りゅうすう、Residue)といい、Res(f, a) と書く。
例1 :f(z) = 5/(z − 1) の z = 1 での留数は 5(展開がそのままローラン展開)。
例2 :f(z) = 1/((z − 1)(z − 3)) の z = 1 での留数は、(z − 1) を掛けて z → 1 とすれば取り出せる:1/(1 − 3) = −1/2。単純な極なら「掛けて代入」が留数の速算法だ。
留数定理
閉曲線Cの内部に特異点 a₁、…、aₙ があるとき——
\[\oint_C f(z)\, dz = 2\pi i \sum_k \operatorname{Res}(f, a_k)\]一周積分 = 囲んだ留数の合計 × 2πi。 グリーンの定理が「縁の一周=中身の渦の合計」だったのと同じ構図で、複素の渦は特異点に集中している——積分が数え上げに変わるのだ。
| 例3 :∮dz/((z − 1)(z − 3))、道は | z | = 2 の円(z = 1 だけを囲む)。 |
囲んだ留数は −1/2 のみ。答え:2πi × (−1/2) = −πi。
実積分への大逆襲
留数定理の白眉は、実数の定積分が解けることだ。
\[\int_{-\infty}^{\infty} \frac{dx}{1 + x^2}\]被積分関数を複素に広げ、実軸+上半平面の大きな半円という閉じた道で積分する。半円部分は半径→∞で消える(分母が2次で勝つ)ので、実軸の積分 = 一周積分 = 2πi ×(上半平面の留数)。
特異点は 1 + z² = 0 の解 z = ±i(N11の虚数解!)。上半平面にいるのは z = i。留数は「掛けて代入」:1/(z + i) に z = i を入れて 1/2i。よって——
\[\int_{-\infty}^{\infty} \frac{dx}{1 + x^2} = 2\pi i \cdot \frac{1}{2i} = \pi\]検算:この積分は arctan の差としても計算でき π ✓ だが、留数なら arctan を知らなくても、もっと難しい積分(sin x/x の全区間積分 = π など)まで同じ手順で落ちる。実の世界の難問を、複素平面に持ち上げて特異点を数えて解く——遠回りこそ最短路。i という「実在しない数」(N11)が、実の積分の値を告げる——数学ハイウェイでもっとも鮮やかな景色のひとつだ。
よくあるまちがい
その1:囲んでいない特異点まで数える。 合計するのは道の内部の留数だけ。例3で z = 3 は圏外だ。どの特異点を囲んだか、図を描いて確認。
その2:2πi の掛け忘れ。 留数の和だけで答えにしない。× 2πi までが定理。実積分の応用では i が留数の 1/2i と打ち消して実数になる——ならなかったら計算ミスの合図だ。
れんしゅう
f(z) = 5/(z − 1) の z = 1 での留数は?
f(z) = 7/(z − 2) を z = 2 を囲んで一周した積分は □πi。□は?
留数とはローラン展開のどの係数?
1/((z − 1)(z − 3)) の z = 3 での留数は?「1/2」のように書いてね。
∫dx/(1 + x²)(全実数)= ?(記号1文字)
その計算で使った特異点は z = ?(記号1文字)
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!