ステップ L1-1-2
行列の積・単位行列・逆行列
この ページで まなぶ こと
- 行列の積を「行×列の内積」で計算できるようになる
- 単位行列Eと逆行列(2×2)をつかえるようになる
積ABの (i, j) 成分は「Aの第i行とBの第j列の内積」。積は順序で結果が変わる(AB ≠ BA)! 単位行列Eは「1」の役、逆行列 A⁻¹ は「逆数」の役で、ad − bc ≠ 0 のときだけ存在する。
積は「行×列の内積」
行列のかけ算は、成分ごとではない。Aの行とBの列の内積(G5!)を並べる:
\[AB \text{ の } (i, j) \text{ 成分} = A\text{の第}i\text{行と } B\text{の第}j\text{列の内積}\]例1 :
\[\begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 5 & 6 \\ 7 & 8 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1{\cdot}5 + 2{\cdot}7 & 1{\cdot}6 + 2{\cdot}8 \\ 3{\cdot}5 + 4{\cdot}7 & 3{\cdot}6 + 4{\cdot}8 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 19 & 22 \\ 43 & 50 \end{pmatrix}\]なぜこんな定義? 行列は「ベクトルを変換する機械」だからだ。連立方程式 3x + y、4x + 2y も、機械A = [[3, 1], [4, 2]] にベクトル (x, y) を入れた出力と読める。ABは「Bで変換してからAで変換」する合成機械——合成がうまく働くように逆算すると、この「行×列」の定義に行き着く。
順序が結果を変える!
数のかけ算では 2 × 3 = 3 × 2(交換法則——N3以来の常識)。行列では——
例2 :A = [[1, 1], [0, 1]]、B = [[1, 0], [1, 1]] で試すと、AB = [[2, 1], [1, 1]]、BA = [[1, 1], [1, 2]]。AB ≠ BA!
「変換の順序」と思えば当然だ:90°回してから鏡にうつすのと、鏡にうつしてから回すのでは結果がちがう。交換法則は、あって当たり前の法則ではなかった——行列は、演算の法則そのものを考え直させてくれる(この視点が代数学の入り口だ)。
単位行列 — 行列の「1」
\[E = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\]対角線に1、他は0。どんな行列に掛けても相手を変えない:AE = EA = A。数の1の完全な行列版だ(「何もしない変換」)。
逆行列 — 行列の「逆数」
数の 2 に対する 1/2 のように、A に掛けると E になる行列 A⁻¹ を逆行列という。2×2 では——
\[A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \quad\Longrightarrow\quad A^{-1} = \frac{1}{ad - bc}\begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}\]対角を入れかえ、残りの符号を変え、ad − bc でわる。ただし——ad − bc = 0 なら逆行列は存在しない(0でわれないから)。数の0に逆数がないことの一般化だ。この重要な数 ad − bc には名前がある——行列式(このたんげんの最終ステップで主役になる)。
例3 :A = [[2, 1], [5, 3]]。ad − bc = 6 − 5 = 1。A⁻¹ = [[3, −1], [−5, 2]]。
検算:AA⁻¹ = [[6 − 5, −2 + 2], [15 − 15, −5 + 6]] = [[1, 0], [0, 1]] = E ✓
よくあるまちがい
その1:積を成分ごとに計算する。 [[1,2],[3,4]] × [[5,6],[7,8]] = [[5,12],[21,32]] は誤り。積は行×列の内積——和とは規則がちがう。
その2:ABとBAを無意識に入れかえる。 式変形の途中で順序を変えてはいけない。移項や約分の感覚が通用しない場面——行列の式変形では「どちら側から掛けるか」を毎回明示する。
れんしゅう
[[1, 2], [3, 4]][[5, 6], [7, 8]] の (1, 1) 成分は?
同じ積の (2, 2) 成分は?
行列の積について正しいのは?
単位行列 E = [[1, 0], [0, □]]。□は?
A = [[2, 1], [5, 3]] の ad − bc = ?
A⁻¹ = [[3, −1], [−5, □]]。□は?
ad − bc = 0 の行列は?
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!