ステップ A6-1-1

ε-N 論法 — 「限りなく」の正体

この ページで まなぶ こと

  • ε-N論法による収束の定義が読めるようになる
  • 具体的な数列でNをεから求められるようになる

「aₙ → α」の定義:どんな ε > 0 に対しても、ある番号 N があって、n > N のすべての n で |aₙ − α| < ε。誤差の挑戦εに、番号Nで必ず応じられる——それが「限りなく近づく」の正体。

「限りなく」は何と何の勝負か

1/n → 0(A4)。この「限りなく近づく」を、あいまいな言葉を使わずに言い切りたい。

こう考える——挑戦と応答のゲームだ。

挑戦者:「誤差 0.01 未満になれる?」 応答:「101番目から先は全部 |1/n| < 0.01。なれる。」 挑戦者:「じゃあ 0.000001 未満は?」 応答:「1000001番目から先は全部OK。」

挑戦がどんなに厳しくても、必ず番号で応じられる——これが「限りなく近づく」の正体だ。記号で書くと:

\[\forall \varepsilon > 0,\ \exists N,\ \forall n > N : |a_n - \alpha| < \varepsilon\]

どんな ε > 0 にも、ある N があって、n > N のすべてで誤差が ε 未満」。これを ε-N論法という。∀(すべての)と∃(ある)——S2章の量化子が、3つ重ねで働いている。量化子の順序が命だ:εが先、Nが後。「挑戦を聞いてから応手を選ぶ」からこそ、Nはεに依存してよい。

定義をつかって証明する

例1 :aₙ = 1/n → 0 を ε-N で証明しよう。

ε > 0 が与えられたとする。N を 1/ε 以上の整数にとれば、n > N のとき——

\[|a_n - 0| = \frac{1}{n} < \frac{1}{N} \le \varepsilon\]

どんなεにもこのNで応じられる。∎ ——「限りなく」という言葉を一度も使わずに、収束が証明できた。

例2 :aₙ = (2n + 1)/n → 2 では、 aₙ − 2 = 1/n。だから例1とまったく同じNで応じられる。「差をεで抑える」に持ち込めば勝ち——証明の型はいつもこれだ。

例3 :収束しないことも言える。aₙ = (−1)ⁿ(1と−1の交互)がどんなαにも収束しないのは、ε = 1/2 の挑戦に誰も応じられないから——どのNの先にも、αから1/2以上離れた項が必ずある(1と−1は距離2離れているので、両方をαの±1/2以内に入れられない)。

なぜここまで厳密にするのか

「限りなく近づく」の直観は、単純な数列なら十分働く。でもこの先——関数列の極限、無限級数の順序交換、積分と極限の交換——直観が平気で嘘をつく領域に入っていく。19世紀の数学者たちは実際に何度も「証明したはずの偽の定理」に足をすくわれ、その反省からこの定義が生まれた。ε-N は、無限を扱う際の安全装置なのだ。

よくあるまちがい

その1:量化子の順序を入れかえる。 「あるNがあって、どんなεでも……」と読むと、まったく別の(まず成り立たない)主張になる。εが先、Nが後——Nはεを見てから選んでよい。

その2:「n = Nで小さければよい」と誤読。 条件は n > N のすべての項。1点だけ近くても、その先で暴れたら収束ではない。

れんしゅう

Q1 きほん

aₙ = 1/n で、|aₙ| < 0.01 が n > N のすべてで成り立つ最小の N は?

Q2 きほん

|aₙ| < 0.001 なら最小の N は?

Q3 きほん

ε-N の定義で先に与えられるのは?

Q4 ふつう

aₙ = (2n + 1)/n のとき |aₙ − 2| = 1/□。□に入る文字は?

Q5 ふつう

aₙ = (−1)ⁿ が収束しない理由は?

Q6 チャレンジ

aₙ = 3/n で |aₙ| < 0.01 となる最小の N は?

もっと れんしゅう

ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。