ステップ S4-1-1

距離の公理と開集合

この ページで まなぶ こと

  • 距離の3公理と、いろいろな距離の例がわかる
  • 開球・開集合と、距離空間での収束の定義がわかる

距離の公理は3つ——正値(d ≧ 0、0は同一点のみ)・対称(d(x,y) = d(y,x))・三角不等式。ユークリッド距離もマンハッタン距離も合格。開球 B(a, r) を部品に開集合が定義でき、ε-N の収束がそのまま一般化される。

「距離」の資格試験

2点間の距離 x − y や √((Δx)² + (Δy)²)——これらに共通する本質的な性質は何か。たった3つだ。集合Xの2点に数 d(x, y) を対応させる関数が距離であるとは:
  1. 正値 :d(x, y) ≧ 0。0になるのは x = y のときだけ
  2. 対称 :d(x, y) = d(y, x)(行きと帰りは同じ)
  3. 三角不等式 :d(x, z) ≦ d(x, y) + d(y, z)(寄り道は損しかしない)

距離を備えた集合 (X, d) を距離空間という。ベクトル空間の公理化(L2)と同じ流儀——性質だけ抜き出し、実例を総入れ替え可能にする

距離はひとつじゃない

例1(ユークリッド距離) :いつもの直線距離 √((Δx)² + (Δy)²)。(0, 0) と (3, 4) の距離は5。

例2(マンハッタン距離)碁盤の目の街をタクシーで走る距離 Δx Δy 。(0, 0) と (3, 4) の距離は 7。斜め横断はできない世界の距離——これも3公理をみたす立派な距離だ。
例3(もっと自由に) :関数どうしの距離 d(f, g) = max f(x) − g(x) (グラフの最大のずれ)。文字列の距離(何文字置き換えれば一致するか——検索エンジンの「もしかして」機能!)。同じ集合に複数の距離を入れることもでき、選んだ距離ごとに別の距離空間になる。
例4(公理の威力) :三角不等式から d(x, z) − d(y, z) ≦ d(x, y) のような一般定理が導け、それはすべての距離空間で一斉に成り立つ。一度証明すれば、ユークリッドでも関数空間でも使い放題——公理化の配当だ。

開球・開集合・収束

距離があれば、解析学の語彙が引っ越せる。

開球 B(a, r) = {x d(a, x) < r}——中心aから距離r未満の点の集まり。ユークリッドなら円盤(縁なし)、マンハッタンなら45°傾いた正方形になる(距離が変わると「球」の形も変わる!)。

開集合 :どの点のまわりにも、その集合に収まる小さな開球がとれる集合。「縁を含まない領域」の一般化だ。

収束 :xₙ → a ⇔ d(xₙ, a) → 0。ε-N論法(A6)の aₙ − α を d に置き換えるだけ——証明も定理も、ほぼそのまま移植できる。関数列の収束(テイラー展開の収束!)も、この枠組みで統一的に扱えるようになる。

よくあるまちがい

その1:距離=ユークリッドと思い込む。 マンハッタン距離の「円」(開球)は正方形。図形の直観は距離の選び方に依存する——公理に立ち返るのが安全。

その2:三角不等式の向きを逆にする。 「直行 ≦ 寄り道」だ。d(x, z) が小さい側。等号は寄り道が直線上にあるとき。

れんしゅう

Q1 きほん

(0, 0) と (3, 4) のユークリッド距離は?

Q2 きほん

(0, 0) と (3, 4) のマンハッタン距離は?

Q3 きほん

距離の3公理は?

Q4 ふつう

マンハッタン距離での「開球」の形は?

Q5 ふつう

(1, 2) と (4, 6) のマンハッタン距離は?

Q6 チャレンジ

距離空間での収束 xₙ → a の定義は?

もっと れんしゅう

ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。