ステップ L2-4-1
内積空間と正規直交基底
この ページで まなぶ こと
- 内積の公理と、内積が生む長さ・直交の概念がわかる
- 正規直交基底の便利さ(座標が内積で取れる)がわかる
内積の公理(対称・線形・正値)をみたす演算があるベクトル空間が内積空間。長さは √(v・v)、直交は内積0。長さ1で互いに直交する基底(正規直交基底)なら、座標は内積をとるだけで求まる。
長さと角度を公理で持ち込む
ベクトル空間の公理(このチャプターの最初)には、和とスカラー倍しかない——長さも角度もまだ無い。それらの源になるのが内積だ。G5の内積 a₁b₁ + a₂b₂ のふるまいを公理化する:
- 対称 :u・v = v・u
- 線形 :(u + u′)・v = u・v + u′・v、(cu)・v = c(u・v)
- 正値 :v・v ≧ 0、等号は v = 0 のときだけ
この演算を持つベクトル空間を内積空間という。すると——
\[|\vec{v}| = \sqrt{\vec{v} \cdot \vec{v}} \qquad 直交 \iff \vec{u} \cdot \vec{v} = 0\]長さも直交も、内積から製造できる。関数の空間にも内積が入る(f・g = ∫fg dx——積分が内積の役!)ので、「関数どうしが直交する」という言葉が意味を持つ——フーリエ解析への扉だ。
正規直交基底 — 理想の軸
基底のなかでも、互いに直交し、それぞれ長さ1のものを正規直交基底という。R² の {(1, 0), (0, 1)} が代表だが、{(1/√2, 1/√2), (1/√2, −1/√2)} も立派な正規直交基底だ(内積0、長さ1を確かめてみて)。
何がうれしいか。ふつうの基底では、座標を求めるのに連立方程式(L1)を解く必要がある。正規直交基底なら——
\[\vec{v} = (\vec{v} \cdot \vec{e}_1)\,\vec{e}_1 + (\vec{v} \cdot \vec{e}_2)\,\vec{e}_2 + \cdots\]内積をとるだけで座標が出る。方程式いらず——影を落とす(正射影)だけで成分分解が終わる。
例1 :v→ = (3, 1) を e₁ = (1/√2, 1/√2)、e₂ = (1/√2, −1/√2) で分解しよう。
v・e₁ = 4/√2 = 2√2、v・e₂ = 2/√2 = √2。よって v→ = 2√2 e₁ + √2 e₂。
| 検算:長さの2乗で確認。 | v | ² = 10、係数の2乗和 = 8 + 2 = 10 ✓(ピタゴラスの定理の一般形——正規直交基底では、長さの2乗は座標の2乗和になる。) |
任意の基底から正規直交基底を作る機械的な手順(グラム・シュミットの直交化法——1本目を正規化、2本目から1本目への影を引いて正規化、…)もあり、どんな内積空間にも正規直交基底が用意できる。
対称行列の宝石定理
転置しても変わらない行列(aᵢⱼ = aⱼᵢ)を対称行列という。[[2, 1], [1, 2]] がそうだ。対称行列には、線形代数でもっとも美しい定理が成り立つ:
対称行列は、固有値がすべて実数で、固有ベクトルを正規直交基底に選べる(直交対角化できる)。
実際 [[2, 1], [1, 2]] の固有ベクトル (1, 1) と (1, −1) は直交していた(内積0!)。正規化すれば例1の e₁、e₂ そのもの——伏線はすべて回収だ。
データの分散を最大にする軸を探す主成分分析(統計)、振動モードの分解(物理)——「対称な問題は直交する軸に分解できる」というこの定理は、応用数学の背骨になっている。
よくあるまちがい
その1:どんな基底でも「内積で座標」をやってしまう。 内積で座標が取れるのは正規直交基底だけ。斜めの基底では正射影どうしが干渉して、係数がずれる。
その2:「対称行列」と「対角行列」の混同。 対称は aᵢⱼ = aⱼᵢ(鏡対称)、対角は非対角成分が0。対角行列は対称行列の特別な場合だ。
れんしゅう
直交の定義は?
正規直交基底の条件は?
(1/√2, 1/√2) の長さは?
v→ = (3, 1)、e₁ = (1, 0) のとき、e₁ 方向の座標 v・e₁ = ?
対称行列の固有値は?
[[2, 1], [1, 2]] の固有ベクトル (1, 1) と (1, −1) の内積は?
正規直交基底での |v|² = 係数の2乗和。係数が 2√2 と √2 のとき |v|² = ?
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!