ステップ L2-1-1
ベクトル空間の公理と例
この ページで まなぶ こと
- ベクトル空間の公理(和と実数倍の8つの規則)の意味がわかる
- 数の組・多項式・関数がすべてベクトル空間の例であることがわかる
「和」と「実数倍」が定義され、結合・交換・分配などの規則をみたす集合がベクトル空間。Rⁿ だけでなく、多項式全体も関数全体もベクトル空間——「たせて伸ばせる」ものは全部仲間。
共通の骨格を抜き出す
これまで出会った「たせて、実数倍できる」ものたち——
- 平面・空間のベクトル(G5):(1, 2) + (3, 1)、2×(1, 2)
- 行列(L1):成分ごとの和とスカラー倍
- 多項式:(x² + 1) + (2x − 3)、3×(x² + 1)
- 関数:(f + g)(x) = f(x) + g(x)、(2f)(x) = 2f(x)
見た目はバラバラ。でも演算のふるまいは同じだ——交換できて、結合できて、分配法則が効いて、0がいて、逆向きがいる。
そこで、ふるまいの規則だけを公理として抜き出す。和とスカラー倍が定義され、次をみたす集合Vをベクトル空間という:結合法則・交換法則・零ベクトルの存在・逆ベクトルの存在(和の規則)、そして 1v = v や分配法則(スカラー倍の規則)——合わせて8つ。
N1のたし算から使い続けてきた計算法則が、ここで「公理」という設計図の座席に着いた。
「例である」ことを確かめる
例1 :Rⁿ(n個の実数の組の全体)。成分ごとの和とスカラー倍で8公理をみたす——ベクトル空間の代表選手。R² は平面、R³ は空間、そして R¹⁰⁰ も同じ資格で扱える(絵は描けなくても、公理は生きている)。
例2 :2次以下の多項式の全体 P₂。(a + bx + cx²) + (a′ + b′x + c′x²) = (a + a′) + …——係数ごとの計算は R³ とそっくりだ。実際、a + bx + cx² ↔ (a, b, c) の対応で、P₂ は R³ と「同じ形」(全単射で演算も保たれる——S3の言葉が効く)。
例3 :仲間はずれの判定。「正の実数だけの集合(ふつうの和)」は? 実数倍 (−1)×2 = −2 が集合の外に出てしまう——ベクトル空間でない。「演算が集合の中で閉じている」ことは、最初に確かめるべき資格試験だ。
部分空間 — 空間の中の空間
Vの部分集合Wが、それ自身ベクトル空間になっているとき、部分空間という。判定は3点だけでよい:0を含む・和で閉じる・実数倍で閉じる。
例4 :R³ の中の「原点を通る平面」は部分空間(平面上の2本をたしても平面上、伸ばしても平面上)。原点を通らない平面は0がないので部分空間ではない。
例5 :連立一次方程式 Ax→ = 0→ の解の全体は、Rⁿ の部分空間になる(解どうしをたしても解、倍しても解——L1の不定解のパラメータたちの住みかだ)。
よくあるまちがい
その1:公理を暗記対象と思う。 8つの規則は「N1以来の計算法則の目録」にすぎない。新しいのは規則ではなく、規則だけで議論するという態度だ。
その2:部分空間の判定で0を見落とす。 「和で閉じ、倍で閉じる」だけ確認して、空集合や原点を通らない平面を通してしまうミス。まず0がいるか——3点セットの筆頭だ。
れんしゅう
ベクトル空間に必要な2つの演算は?
2次以下の多項式全体 P₂ と「同じ形」なのは?
「正の実数だけの集合」がベクトル空間でない理由は?
部分空間の判定3点セットは?
R³ の「原点を通らない平面」は?
Ax→ = 0→ の解全体は?
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!