ステップ A6-3-2

テイラーの定理 — 関数を多項式で近似する

この ページで まなぶ こと

  • テイラー展開の係数が f⁽ⁿ⁾(0)/n! で決まる理由がわかる
  • sin x・eˣ の展開と近似計算ができるようになる

なめらかな関数は多項式で近似できる:f(x) ≒ f(0) + f′(0)x + f″(0)x²/2! + …。各係数は「n回微分してx=0」で取り出せる。eˣ = 1 + x + x²/2! + x³/3! + …、sin x = x − x³/3! + x⁵/5! − …。

電卓はどうやって sin を計算しているのか

sin 0.3 を電卓が一瞬で返す。でも計算機ができるのは、根本的にはたし算とかけ算だけ——つまり多項式しか計算できない。sin をどうやって?

答え:sin を多項式で近似している。その理論がテイラーの定理だ。

係数を「微分で取り出す」

f(x) を多項式 c₀ + c₁x + c₂x² + c₃x³ + … で表せたとしよう。係数はどう決まるか?

  • x = 0 を代入 → c₀ = f(0)
  • 1回微分して x = 0 → c₁ = f′(0)
  • 2回微分すると x² の項から 2c₂ が出る → c₂ = f″(0)/2
  • 3回微分すると 3・2・1・c₃ → c₃ = f‴(0)/3!

一般に cₙ = f⁽ⁿ⁾(0)/n!(階乗はP1以来の再会!)。つまり——

\[f(x) = f(0) + f'(0)x + \frac{f''(0)}{2!}x^2 + \frac{f'''(0)}{3!}x^3 + \cdots\]

関数のすべての情報が、1点での微分たちに書き込まれている——テイラー展開の思想だ。(どこまで近似が正確かを剰余項で見積もるのがテイラーの定理。x が小さいほど、項を増やすほど精密になる。)

三大関数を展開する

:何回微分しても eˣ、x = 0 で1。だから全係数が 1/n!——

\[e^x = 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \cdots\]

x = 1 とすれば e = 1 + 1 + 1/2 + 1/6 + 1/24 + … ≒ 2.708…(5項でもう2.71に迫る)。

sin x :微分は cos → −sin → −cos → sin と4周期。x = 0 での値は 1、0、−1、0 のくり返し——

\[\sin x = x - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \cdots\]

例1 :sin 0.3 ≒ 0.3 − 0.027/6 = 0.3 − 0.0045 = 0.2955(真の値 0.29552…)。2項でこの精度——電卓の中身はこれだ。

例2 :第1項だけの近似 sin x ≒ x は、あの名極限 sin x/x → 1(A5)の言い換え。振り子の等時性も、この近似の上に成り立っている。

cos x の展開は 1 − x²/2! + x⁴/4! − …。並べて眺めると——eˣ の展開の項を、sin(奇数次)と cos(偶数次)が符号ちがいで分け合っている。この「符号のずれ」を i がぴったり埋めるのがオイラーの公式 e^(ix) = cos x + i sin x——G6の回転とA5のeが握手する、数学屈指の絶景だ(本格的な扱いは複素解析で)。

よくあるまちがい

その1:n! でわり忘れる。 x³ の係数は f‴(0)/3! = f‴(0)/6。微分でx³から係数を取り出すとき3・2・1が出る——それを打ち消す分だ。

その2:大きいxでも少項で近似する。 テイラー近似の精度はxが0に近いほどよい。sin 10 を「10 − 10³/6」で計算したら大惨事(−156.7、真値は−0.54)。近似には有効範囲がある。

れんしゅう

Q1 きほん

テイラー展開の x³ の係数は f‴(0)/□!。□は?

Q2 きほん

eˣ = 1 + x + x²/□ + …。□は?

Q3 きほん

sin x = x − x³/□ + …。□は?

Q4 ふつう

cos x = 1 − x²/□ + …。□は?

Q5 ふつう

e ≒ 1 + 1 + 1/2 + 1/6 を計算すると 8/3 ≒ 2.□7。□は?

Q6 チャレンジ

sin 0.3 ≒ 0.3 − 0.0045 = 0.2□55。□は?

Q7 チャレンジ

e^(ix) = cos x + i sin x の名前は?

もっと れんしゅう

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