ステップ L2-3-2
対角化と Aⁿ
この ページで まなぶ こと
- 対角化 A = PDP⁻¹ の意味と手順がわかる
- 対角化をつかって Aⁿ を計算できるようになる
固有ベクトルを列に並べた P と固有値を並べた対角行列 D で A = PDP⁻¹。すると Aⁿ = PDⁿP⁻¹ で、Dⁿ は対角成分をn乗するだけ——くり返し変換が一撃で計算できる。
固有ベクトルの目線に立つ
前ステップの A = [[2, 1], [1, 2]] は「(1, 1) 方向に3倍、(1, −1) 方向に1倍」だった。固有ベクトルを軸に選び直せば、この変換はただの——
\[D = \begin{pmatrix} 3 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\]軸ごとの伸縮(対角行列)に見えるはずだ。座標の翻訳を担うのが、固有ベクトルを列に並べた行列 P = [[1, 1], [1, −1]](基底の取りかえ——ベクトル空間のたんげんの言葉!)。関係式は——
\[A = PDP^{-1}\]「Pで固有ベクトル座標に翻訳 → Dで伸縮 → P⁻¹で戻す」。これを対角化という。n次行列なら、一次独立な固有ベクトルがn本そろえば対角化できる(固有値がすべて異なれば自動的にそろう)。
Aⁿ が一撃で出る
対角化の最大のご利益はこれだ。
\[A^n = (PDP^{-1})(PDP^{-1})\cdots(PDP^{-1}) = PD^nP^{-1}\](間の P⁻¹P = E が次々消える——望遠鏡式!)そして対角行列のn乗は対角成分をn乗するだけ:
\[D^n = \begin{pmatrix} 3^n & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\]例1 :A = [[2, 1], [1, 2]] の A¹⁰ の (1, 1) 成分は?
A¹⁰ = PD¹⁰P⁻¹ を計算すると、(1, 1) 成分は (3¹⁰ + 1)/2 = (59049 + 1)/2 = 29525。行列を10回掛ける苦行が、数のn乗ひとつに化けた。
例2(フィボナッチの正体) :漸化式 aₙ₊₂ = aₙ₊₁ + aₙ(A3)は行列 [[1, 1], [1, 0]] のくり返しで書ける。この行列の固有値は λ² = λ + 1 の解——黄金比 φ = (1 + √5)/2 とその相棒。フィボナッチ数列の一般項に√5が現れるのは、固有値が無理数だからだ。となり合う項の比が φ に近づくのも、大きい固有値が支配的になるから——くり返しの未来は、最大固有値が決める。
この原理は広い。人口の推移、マルコフ連鎖、Googleのページランク(リンク構造の行列の固有ベクトルがページの重要度!)——「同じ変換のくり返し」の長期挙動は、固有値・固有ベクトルがすべて教えてくれる。
対角化できないことも
[[1, 1], [0, 1]](せん断)の固有値は1だけ(重解)で、固有ベクトルは (1, 0) 方向の1本しかない——2本そろわず対角化不可能。すべての行列が対角化できるわけではない(できない行列の理論——ジョルダン標準形——は、この先の線形代数で)。ただし次のたんげんで見るとおり、対称行列はいつでも対角化できるという素晴らしい保証がある。
よくあるまちがい
その1:PとDの対応のずれ。 Pの第k列の固有ベクトルと、Dの第k対角成分の固有値は同じペアでなければならない。列の順序を入れかえたら、Dも一緒に入れかえる。
その2:Aⁿ = PⁿDⁿ(P⁻¹)ⁿ と書く。 正しくは PDⁿP⁻¹——PとP⁻¹は端に1回ずつだけ。間で打ち消し合う構造を思い出そう。
れんしゅう
対角化 A = PDP⁻¹ の P の列に並ぶのは?
D = [[3, 0], [0, 1]] の D⁴ の (1, 1) 成分は?
Aⁿ = ?
固有値 2 と 5 の対角化可能な行列の A³ の固有値のうち大きいほうは?
n次行列が対角化できる条件は?
フィボナッチ数列の隣接比が近づく値は?
もっと れんしゅう
ボタンを おすと、あたらしい もんだいが でて くるよ。なんかいでも れんしゅう できるよ。
クリア! よく できました!